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道の駅

グランデザインでは道の駅の設置者・運営者に対する助言を行っています。「その道の駅は地域にとってどんな存在であるべきか」という大きな絵(グランデザイン)を描いた上で、道の駅のコンセプトを再構築したり、施設の魅力を高めるための具体的な施策をご提案しています。

市町村や指定管理者の方でご興味のある方はお気軽にお問合せ下さい。

 
道の駅についての考察

<1>道の駅の特徴

道の駅の正しい概要については国土交通省の公式ウェブサイトをご参照下さい。
以下に私達が考える道の駅の特徴を述べます。
(厳密さよりも、わかりやすさを優先していますので、一部当てはまらないケースもありますがご容赦下さい。)

①道の駅は一般道路のサービスエリアである
道の駅の施設は一見したところ高速道路のサービスエリアと似ています。広い駐車場と公共トイレがあり、土産物を売る店や軽食コーナーがあります。違いは、国道や県道などの一般道路に面しているということです。

②道の駅のマークは国土交通省の道路局が管理している
「道」という漢字と休憩所を示す絵を組み合わせたような道の駅のマークは誰でも勝手に使うことはできません。道の駅という名称と共に国土交通省の道路局が管理しており、道路局が認めた施設だけが道の駅を名乗り、マークを使用することができます。つまり、道の駅は道路の一部と言ってもいいような公共施設なのです。ですから、実は駐車場とトイレと道路情報が主役です。そして道路地図に必ず載っていますし、「道の駅まであと何キロ」といった道路標識も作られます。

③基本的には一つの市町村に一つ
国土交通省は基本的には一市町村に道の駅は一カ所ということで整備してきました。一村一品運動の精神とも通じるところがあると思います。各市町村の道路沿いに駐車場のあるたまり場を作ることで、幹線道路を通る人々が素通りするのではなく、自動車を停めてその市町村に親しむことができるようにするという意図があります。その後の市町村合併で複数の道の駅を抱える市町村も出てきています。

④駐車場とトイレは国土交通省、土産物店は自治体
道の駅はたくさんあり各々の成り立ちも違うのですが、大づかみに言ってしまうと、駐車場とトイレは国土交通省が道路と一緒に作ります。特に細い幹線道路を拡張したり、町の中心部を迂回する広くてまっすぐなバイパス道路を作ったり、高速道路のインターチェンジを作ったり、ダムの周辺道路を作ったりといった事業の際に道の駅が作られることが多いようです。そしてその駐車場に面した土地に自治体が地域振興を目的とした施設を建て、そこで物販や飲食のサービスを行っています。
道の駅で買い物することを楽しみにしている人たちは道の駅と言えばまずこの地域振興施設を思い浮かべると思います。自治体が建てますが、多くの場合には地域産業の振興を名目として農林水産省や経済産業省などの補助金を得ています。道の駅には施設のどの部分を誰が整備したかを掲示した看板がありますのでご覧いただくと成り立ちがわかります。(自治体が駐車場やトイレを含めて全て整備して国土交通省に認定してもらった道の駅もあります。)

⑤道の駅の運営主体はバラバラ
全国の道の駅にある地域振興施設は、道の駅という同じ名称とマークを使っていますが、サービスエリアやコンビニエンスストアなどとは異なり、「本部」にあたる組織はありません。各々の自治体が運営責任を負っています。ですから同じ商品を本部が一斉に仕入れて販売するとか、同じ冷蔵庫を買って一斉に配備するといったことはありません。業者さんは全国の道の駅に売り込みをしようと思っても、一軒一軒足で回るしかありません。

⑥指定管理者制度を使った公設民営
道の駅にある地域振興施設は自治体が整備する公共施設ですが、業務の内容が施設の維持管理と物販や飲食店の経営であるため、市町村の職員が直接運営に携わるのではなく、自治体が設立した第三セクターの企業に業務を委託する場合が多いです。また近年は民間企業にも門戸を広げ、入札で選ばれれば100%民間企業でも道の駅の指定管理者として業務を受託することができるようになりました。つまり、鉄道や通信と同様に道の駅にある地域振興施設でも民営化が進んで来たのです。それによってサービスが向上したり経費が効率的に使われたりといった効果が出ています。

<2>道の駅はなぜ増えているのか

①優れたプラットフォーム

駐車場、トイレ、道路情報が道の駅の共通機能で道路局の基準・規制があります。この部分については全国どの道の駅へ行っても一定基準以上の施設であるという保証があります。そして同じ道路標識、道路地図やカーナビでの表示があります。これが道の駅のプラットフォームです。ところが、駐車場に隣接して自治体が整備する地域振興施設の方は自由度が高く、道路局はお金も出さない代わりに規制もしていません。そのため地域によってさまざまな道の駅ができます。食事に例えれば、駐車場やトイレは白飯で、地域振興施設がおかずのようなものです。道の駅はどんなおかずにでも合う白飯のようなプラットフォームなのです。プラットフォームがあることでバラバラの主体が経営しているにも関わらず全国ネットワークの一員として信用と知名度を獲得することができます。新たな施設を作っても全国の人に知ってもらうことは大変ですが、道の駅に参加すれば様々な地図や標識に掲載されますので非常に有利です。

②自由度の高い分散型のネットワーク
道の駅の地域振興施設には本部組織が存在しません。中央から号令して画一化や効率化を促す本部が存在しないのです。バラバラな主体が運営しているために目的も設備もサービスも多様です。道の駅は中央官僚制度から生まれたにもかかわらず中央集権型ではなく分散型のネットワークであり、市町村が主体性を持って工夫しなければなりません。そのことが道の駅を魅力的にしているポイントと言っても過言ではないと思います。自由度が高いため、地域の実態に合わせて如何様にも設計でき、色々な省庁の補助金を活用することができることも増えやすかった理由になっているでしょう。

③自治体にとっては貴重な地域振興実現の場
自治体の立場から見ると、道の駅は地域振興を具体的に進める、あるいは進めていることを目に見える形で示すために最適の事業です。自治体は様々な地域振興に取り組んでいますが、その内容が住民に伝わりにくい悩みがあります。道の駅で地域の農家が直接野菜を販売したり、女性達が加工所で饅頭や漬物を作ったり、木工や陶芸など伝統工芸の体験施設を運営したりすることは地域への貢献がわかりやすい事業です。特定産業の振興事業と異なり、道の駅ならば様々な業種業態を横断的に係らせることができます。商工会議所が特産品売場、農協が農産物直売所、観光協会が観光案内所をそれぞれ担うなど、地域の組織を総動員しやすい事業でもあります。道の駅を地域内の協働の場として生かすことができるのです。

④利用者(消費者)にとっては安心な食材が買える場所
利用者(消費者)の立場から見ると今の道の駅は農産物直売所のイメージが強いでしょう。繰り返される食品事故を経験したことで食の安全への関心が高まりました。生産者の顔が見え、安心して新鮮な食材が買える直売所の存在が近年道の駅の人気を高めた原動力であり、道の駅の増加を支えてきたといってもよいのではないでしょうか。
二十世紀の日本では全国規模の農産物の流通ネットワークが整備されたことで大都市への安定供給が実現した反面、工業製品のように規格化が進み、価格主導権を市場や小売業に支配されてきました。それに対して、農家が自主的に流通させる取り組みが農産物直売所です。おいしい物を作ろうという農家の努力が消費者に支持され、食品事故や災害による大規模流通への不安も重なって、直売所人気が高まりました。直売所は道の駅にしかないわけではありません。また元々全ての道の駅に農産物直売所があったわけではありません。今では道の駅には農産物直売所があるものと期待されて来られる方が多く、野菜は無いのかと聞かれるために、近隣の農家に頼んで野菜を売場に並べたという道の駅もあるほどになっています。

⑤旅行者にとっては地域の玄関口
自動車で移動する旅行者は道の駅があれば取りあえず寄ってみようという気持ちになります。それは道の駅に行けばその地域の特産品が万遍なく揃えられていて、名物があればそれが食べられて、観光地の地図やパンフレットなどの情報が得られて、歴史や文化についての概要がわかるからです。道の駅には地域の玄関口としてワンストップでその地域のことを把握できるコンテンツの集積があり魅力となっています。

道の駅は元々移動中の休憩場所として整備されていますが、人気が出てからは道の駅を巡ること自体を楽しむ人が少なくありません。特に男性は収集や征服を好み、全部でこれだけあると言われるとまだ行っていない道の駅へ行ってみようという気持ちになるようです。女性は新鮮で安い食材が買えることを楽しみにしています。大規模流通には乗らないような商品もありますから、時には新たな発見もあります。2006年から始まった団塊世代のリタイアが2010年頃には本格化し、夫婦で旅行する人を道の駅でよく見かけるようになりました。団塊世代は人数が多いだけでなく、夫婦で行動を共にする人が上の世代よりも多いといいます。夫は情報収集し、写真をとり、名物を食べ、スタンプを押す。妻は宝探し気分で買い物、ということで道の駅に来ると両方とも満足度が高いのです。欧州では町村ごとに中心に広場や教会があって、ここへ来ればこの町に来たといえるシンボリックな場所がありますが、日本の町の成り立ちでは城下町や門前町でないかぎり、そういう場所がないことが多いです。そんな時に、道の駅は自治体がお墨付きを与えていますから「この町を押さえた」という達成感を与えてくれる場所です。だから(男性は特に)道の駅を順に巡りながら間に立ち寄り先をはさんでいくことで旅行の計画が立てやすくなるのだと思います。その意味で道の駅はドライブインとは決定的に異なります。
背景にはステレオタイプな観光地は飽きているということがあるでしょう。取り立てて観光地がない地域でも道の駅を目当てに旅行者が入って来てくれます。だから自治体は道の駅を作るのでしょう。

⑥地域ビジネスのニーズ
地域の生産者や業者からすると、道の駅は概してスーパーや百貨店よりも販売手数料が低く、負担金や協賛金も求められないことから、取引条件が有利です。品質の要求水準は低く、小規模の生産者でも、経験の少ない生産者でも取引してもらえます。
農家からすると、農協が弱い地域では農協離れの直売所として農家が協力して運営し、農協が強い地域では農協自体が売場を経営していることが多いですが、いずれにしても市場を通さずに販売できるのでやりがいにつながっています。

<3>道の駅の課題
道の駅の地域振興施設が抱える課題について整理します。

①財務
2012年3月に一般財団法人地域活性化センターが行った調査では、393の道の駅からの回答で年間の売上高平均は約2億4千万円でした。売上高が1億円から3億円の間の道の駅が全体の37.6%ですが、5千万円未満も19.9%あり、10億円以上のところも3%あります。つまり立地や規模や中身によって売上高に大きく差があります。道の駅をひとまとめに論じることはできません。小規模でもコストをかけず上手に経営しているところもありますし、売上規模が大きくても維持費が高いところではむしろ経営は厳しい場合があります。損益については統計的なデータはありませんが、赤字の道の駅もたくさんあります。

道の駅の赤字を民間企業の赤字と同じように考えるべきか、公共サービスの費用ととらえるべきか、意見が分かれます。以前はむしろ道の駅が利益を追求するのはおかしいという考えも多かったのですが、最近では自治体の財政悪化に伴い、民間のような効率を求める風潮も増えています。

平成の大合併で一つの自治体に複数の道の駅を抱えるところも少なくありません。道の駅の数が増えたことで競争が激化したり、高速道路網整備が進んで道の駅がある一般道路の通行量が減ったりといった問題もあります。実際に指定管理者のなり手がない道の駅も出てきています。経営状況が悪いところは閉鎖・統合の対象となることは他の行政施設と同じです。制度発足から20年が経過し、施設の老朽化も始まっています。大規模な修繕や建て替えをするかどうか迫られると、閉鎖という選択肢もでてくるでしょう。

②体制と人材
道の駅の地域振興施設で重要なのは店頭よりも後ろの仕組みです。つまり、生産者や地域の団体等とのつながりです。地域の経済・文化活動が自立して活性化するように、地域に不足している機能を補っていくのが道の駅の役割です。
地域の生産者に売り場を提供するという機能に留まらず、消費者の反応を把握するマーケット調査の機能、新商品開発の機能、メディアへのPRの機能、卸売の商社機能などバックヤードの仕組みを充実させている道の駅では継続的に人気商品も生まれ、集客力が衰えることはありません。店頭の見た目だけ真似をして商品を置いて売り場を作っているだけの道の駅は伸び悩みます。道の駅を良くすることを考えても答えはみつからず、地域の力を本当に強くするために道の駅が何をできるかを考えることが、結果的に道の駅の発展にもつながるのではないかと思います。

最近は地域で消費する地産池消ではなく地域の外で消費してもらうことを重視する道の駅もあります。道の駅の店頭に置いておくだけでは外へ売ることはできません。商社や百貨店に勤務していた人がIターンやUターンで道の駅に入って、それまでその地域になかった商品力や販売力を補うような取組が期待されます。実際にそういう事例は出始めています。

設立から時間がたってくるにつれて、体制が固定化している道の駅も少なくありません。出荷者は組合などを作っていることが多いのですが、そこが既得権益を守る人々の集団になっていて、新しい人や新しいアイディアが入ってくることを拒むような文化のところもよくあります。(私たちはこれを道の駅のタコツボ文化と呼んでいます。)

ベンチャー企業でも創業期から次の段階へ移るときに人材の入れ替わりがありますが、道の駅でも設立のために苦労した世代の人たちから将来の地域を作る人たちへと世代交代を行って、頼りになる道の駅であり続けられるかどうかが課題となります。ターン組の活用も含めて地域の懐の深さが試されます。

③指定管理者制度の限界
道の駅の多くで指定管理者制度が導入されています。自治体が設置した施設の運営を入札で最も良い提案をした事業者に運営委託する方法です。道の駅によって、自治体がお金を払って委託する場合と、事業者が収益の一部を自治体に納める場合があります。指定管理者制度はやる気のある事業者が、民間のノウハウで効率的に運営することで、利用者の満足度が高まり、財務的にも改善するといったことが期待されます。

しかし、限界もあります。指定管理の契約期間が一般的に3年~5年であるために、受託する事業者は長期的な取り組みを行うことが難しくなります。商品開発、ブランドイメージ作り、人材育成、都市部の事業者との連携などは10年、20年といった期間をかけて取り組むべきものです。優秀な人材の採用も5年間の期限付きでは難しいのが実情です。従って、スタッフの大半は非正規社員で、社員はリタイアを控えた60歳前後の駅長だけといった道の駅もよくあります。そういった状況で地域の発展に役立つ本格的な取り組みを期待するには限界があります。設備投資も同様です。5年間では償却しきれない設備を指定管理者の責任で買うことは困難です。市町村に設備投資を依頼すると手続きに時間がかかり機動的な店づくりには間に合わないことも少なくありません。道の駅の経営を改善するためにはこうした問題を解決していく必要があります。

④農産物直売所に続く中身
道の駅は特に震災以降の直売所人気で注目が高まったわけですが、農産物直売所は道の駅以外にもあって増えており、スーパーマーケットなどの量販店でも直営農場や契約農家から直接仕入れるなど市場を通さない地産地消型の売り場作りを研究してきています。農家からの取り寄せやネット通販も普及してきています。直売所だけではいずれ道の駅の人気も衰えるでしょう。新しいどんな体験を提供できるか、さらに知恵を絞って行かなければなりません。タコツボ文化に陥ることなく、新しいものや異質なものと積極的に交流してそこからオリジナリティのある中身を作りだして行けるかどうかが問われる段階に入りつつあります。

⑤立地の問題
道の駅は新しい道路と一体で開発されることが多く、バイパスや高速道路のインターチェンジの前などに立地します。すると元々の中心地とは離れた場所になります。そのため道の駅の周辺が殺風景で魅力がなかったり、住民が道の駅を利用しにくかったり、道の駅に来た旅行者が中心地にまで回遊してくれなかったりします。中心地の昔からの商店が道の駅を脅威に感じ、敵視することもあります。道の駅と中心地を結ぶ取り組みが求められます。

⑥ネットワークの活用
道の駅がネットワークであることを活用できていないことも課題です。スタンプラリーを除けば道の駅が広域で連携できている地域は少なく、近隣とは協力し合うべきなのに競合としか考えていない道の駅が多々あります。実際に都市部の消費者からすれば魅力的な道の駅が一つだけある方面よりも、回れる範囲にいくつか魅力的な道の駅があるような方面を選ぶと思います。方面間の競争があることを理解するべきです。また、道の駅同士は人材交流や商品交流を行って、共に学び高め合うことを行うべきです。消費者から見れば「道の駅」は一つの名前であり、たまたま行った道の駅が不満足なものであれば道の駅全体に対するイメージが悪くなります。道の駅はネットワーク全体の一部を構成しているということを自覚して行動するべきです。

⑦外国人旅行者
道の駅が今後担う役割として私達が期待しているのは、海外から訪れる外国人旅行者が日本国内を旅行するときのプラットフォームとしての役割です。東京や京都などのステレオタイプな観光地だけでなく、道の駅を活用して日本の地域を隈なく巡ることができるわけです。日本人の旅行者が行っているのと同じように、車を運転して、道の駅に行き、その地域の情報を得て地域に入っていく。人為的な観光地ではなくありのままの日本の姿を楽しんでもらう。そのことを道の駅ネットワーク全体として海外にPRして行くべきだと思います。期間中鉄道が乗り放題になる「ジャパンレールパス」で国内を巡る外国人は少なくありませんが、道の駅ネットワークはその自動車版あるいは自転車版となり得ます。しかしこの点については分散型ネットワークであるがために、司令塔が不在です。プラットフォームを管理する道路局と同じ国土交通省の観光庁が連動していくことに期待したいと思います。

⑧評価
私が現在最も必要だと感じているのは、道の駅の地域振興施設の評価基準です。これまでのところ分散型のネットワークとして、自由度高く整備されてきた道の駅の地域振興施設ですが、自律分散型である利点を生かしつつも、普遍的な評価基準を整備する必要がある段階に来ていると思います。
指定管理者制度で入札を行っていますが、各自治体は実際のところ何を基準に事業者を選べばよいのか悩んでいます。それはとりもなおさず、道の駅の姿が多様であるがゆえに、「良い道の駅とは何か」という普遍的な問いが追究されて来なかったからです。

例えば、道の駅は地域の玄関口ですが、「地域」という場合に、ある地理的な範囲の意味で使うとすると、どこまでをその道の駅の属する地域とするのかという問題があります。単純に自治体の行政区域が良いのか、合併で自治体の境界が広がっており、文化的には地元ではない集落も同じ地域になっていたり、同じ自治体の中に複数の道の駅がある場合に重複させるのか、地域を分割するのかという問題もあります。地域を広げれば商売的には扱える商品・コンテンツが増えるので売り場は充実しますが、周囲の道の駅と同じような内容になる弱みもあります。

例えば、利用者として、外からの旅行者と地元の住民の利用をどのような割合で、またそれぞれに対してどのようなサービスを考えていくべきなのか。経済効果だけでなく、芸術・文化活動の拠点としての役割をどう考えるか。昔の宿場のような情報交換の場として地域と外の情報が交差する道の駅の機能をどう果たすか。地域住民への行政サービスや福祉の拠点として機能しなくても良いのか。

よく店頭の洗練されたディスプレイやレジを見て、スーパーのような道の駅だと批判する人がありますが、私達は違う見方をします。クジラと魚が形が似ているように、小売りというサービスを提供していればスーパーや百貨店と似るのは当然ですし、それ自体は問題ではありません。それよりも地域とのかかわりの中で地域振興施設としての役割を果たせているかということが重要だと思います。

ものさしは一つではないと思います。多様な道の駅を適切に評価できる基準を設けるべきです。それは曖昧になりがちな「道の駅の本質とは何か」という議論を深めることに他ならないからです。現状は来場者数や売上金額など経済的なボリュームに目が行きがちです。店頭のしつらえや接客は小売業との共通点もあります。しかし、道の駅は民間の商業施設とは本質的に違います。その点を設置者である市町村の職員も、地域団体も、住民も、出荷者も、取引先も、ひいては利用者も理解する必要があります。

私はこれまで北海道から沖縄までたくさんの道の駅を見てきました。伊藤忠商事に勤めていた頃は先輩と共に未知倶楽部という道の駅運営者のネットワーク作りに取り組みました。各地を取材して優れた道の駅とは何かを考え、道の駅の経営者の視点で道の駅を考える機関誌を制作していました。未知倶楽部を離れてからは個別の道の駅に対する改善提案や、設置者・指定管理者への経営助言を行っています。

私は道の駅ネットワークに大きな可能性を感じると共に危機感も感じています。折角の優れたプラットフォームを5年後、10年後に今よりもっと魅力的なものにするために少しでも役立ちたいと考えています。


情報アップデイトいたしました、綜合ユニコム「新版[地方創生拠点]としての「道の駅」開発・再生資料集」をご参照ください。

https://www.sogo-unicom.co.jp/data/book/0520190603/index.html